ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

最近思うこと(パート2)

テーマ【ミルグラム実験

 

ミルグラム実験と言われるものがある。心理学者のミルグラムさんが行った。内容は、教師役となった被験者が壁を隔てて離れた生徒役に問題をだし、生徒が間違えると教師が電気ショックを与えるというもの。壁の向こう側の生徒役(実際は役者)は何度も問題を間違え、そのたびに苦しい声を上げているにも関わらず、教師役の被験者は、真横にいる実験者に強く促されることで、電気ショックを与え続けた。この実験がもたらした結論は、普通の人々は権威者がいるだけで非人道的な行為を行うよう誘導されてしまうということであった。

ミルグラム実験アイヒマン実験とも言われる。こちらはミルグラムさんが実験するきっかけとなった人物、アドルフ・アイヒマンの名前から。彼はナチスホロコーストに関わった人物として知られている。秘密警察ゲシュタポの長官として、第二次世界大戦中に数百万人のユダヤ人を強制収容所に送り込んだ。終戦直前、戦争の状況が不利だと分かると、彼は難民を装いアルゼンチンへ逃亡する。終戦後、情報を聞きつけたイスラエルのスパイがアルゼンチンに潜伏して、苦労の末アイヒマンを探しだした。その決め手になったのが、彼が妻との結婚記念日に花屋で花束を購入したことであった。ユダヤ人虐殺の指導者と聞くと、ダースベイダーのような非人道者を思い浮かべがちだが、彼のような普通の人間でも野蛮な行為をしてしまうというのが心理学の研究対象になったわけである。

今年の1月にポーランドアウシュビッツを見学したのは以前の記事でも書いた。それなりに衝撃を受けたのも事実で、あれ以来、組織に属する人間の行動について注意深く見るようになった。現地を回ると分かるのだが、ヒトラーの写真は館内でほとんど見かけない。それはホロコーストを彼ひとりの責任になすりつけていないことを意味しているらしい。強制収容所という建物を残し、歴史と向き合うことによって、ヨーロッパ全体で社会としての責任を取っているのだと思う。実際、学校教育の一環で毎年150万人の子供たちがアウシュビッツを訪問していて、主にメンタル面を学ばせている。当事者意識を持っているという点においては、同じ負の遺産である広島や長崎とは少し意味合いが違うのかもしれない。

久々の投稿でなぜこんな話を書きたくなったかというと、同じような状況が、わたしが身を置く環境にも起きかねないと危惧しているからである。変革という大きなうねりの中にあって、いろいろな物事が混沌としてきた。そこで目につくのが、中身と形式がズレてきているにもかかわらず、既存のルールを守るのに躍起になっていること。もっと気がかりなのは、それを責任者という名の元、限られた人間の一存だけで動いていること。そして大多数の担当者はなにも考えず言われたことに従うばかりなこと。思うに、本来は目的があって、ルールはその目的を達成するための手段でしかない。なので、目的から乖離したルールは変えていく必要があると思って動いているのだが、そこにエネルギーをかけることにだんだんと疲れてきた。

でもやはり、誤った命令やルールには毅然と立ち向かわなければならない。当時のドイツと比較するのは正直馬鹿げていると思ってもいるが、自分の頭で考えないまま周りに流されて行動することの危険性を、アウシュビッツで学んだ経験は無駄にしてはいけない。

 

2019.11.21 T.Y.