ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

樽酒マイスターファクトリー

テーマ【樽酒】

 

菊正宗酒造へ行ってきた。電車を乗り継いで、最寄りである六甲ライナーの南魚崎駅で降りる。六甲アイランドへの玄関口であるため、モノレールのこの駅はほとんど海に浮かんでるようだった。1Fの出口を抜けて六甲ライナーの路線沿いを歩いていくと、左手に菊正宗の記念館がある。ここは入場無料だ。

江戸時代、灘の酒は樽に入れられたものが樽廻船といわれる船で運べばれて江戸へ「下って」*1いた。下り酒は江戸っ子からの人気で、反対に「下り酒ではない=大したことない」から今の「くだらない」の語源になったという説もあるとか。それ以来、灘の酒は日本随一の生産量を誇り、今にも受け継がれている。話は逸れたが、当時樽で運ばれた日本酒は船で揺られる過程で、樽の香りや風味が酒に移ってしまう。それが逆に良い味わいを出して今では「樽酒」として親しまれている。

ここ菊正宗では、樽酒に使われる樽を、奈良は吉野の杉を用いて自社生産している。今日はその樽工房を実際に見学させていただいた。形の異なる材木をパズルのように組み合わせ、竹で編んだタガで締め付けて作る酒樽はそれこそ職人芸で、ひとつ40分あまりで作成するらしい。日本酒をその樽に注入して寝かせることで、吉野杉の香りや風味を酒に染み込ませる。頃合いを見計らってそれを瓶詰めして製品になるという。樽酒で使われた樽は日本酒では二度と使われず、漬物をはじめとした二次用途向けに出荷される。

樽酒を樽から作っているというのには驚かされた。餅は餅屋というが、ここでは餅屋が杵や臼まで作っていると言ったところか。しかしながら、酒樽職人の数は減ってしまっているので、菊正宗は後継者育成に力を入れているそうである。今日案内していただいた方は女性の職人候補の方であった。カンナなどの道具も樽作り用の特注品で、修理できる人もいないので大事に使うしかないそうだ。

見学後にこの樽酒を試飲させていただいた。中身はしっかりとした純米酒。飲む前はウイスキーを彷彿とさせるスモーキーな香りなのに、飲むと「辛口ひとすじ」を掲げる菊正宗らしい、キリッとした日本酒であった。試飲はほかにも生原酒や新ブランド百黙の純米大吟醸も楽しめた。これらもまた美味であった。大事なことなのでもう一度言うが「無料」である。もちろんドライバーの人はNGです。公共交通機関で行くことを強くオススメします。*2

 

2019.08.25 T.Y.

*1:当時は現在と逆で、京都へ行くのが「上り」とされていた。

*2:樽酒マイスターファクトリー|菊正宗~生酛(生もと)で辛口はうまくなる。~