ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

テーマ【風】

 

風はあまり好まない。ヨットに乗るのでもない限り、風が好きな人もそうそういないだろうけど、比較的風を嫌うタイプになってしまっているかな、と思う。というのも、中高生時代はよく自転車に乗っていたからだ。

自転車という乗り物、簡単に手に入るし、資格も要らないし、乗れるようになるまでの訓練も大して時間はかからない。使い勝手もすこぶる良いけど、時々その場に投げ捨てて、歩いて帰りたくなることがある――上り坂の時と向かい風の時。

経験したことのない人もいないと思うけど、本当にペダルを漕ぐのが嫌になる。上り坂は終りがあるからまだいいけど、向かい風の方はそうではない。進行方向と風向きが向かい合っている限り続く。運が悪ければ目的地に着くまでずっとだ。右に曲がっても、左に曲がっても、向かい風のまま、なんてことが案外起きるわけで。

中高時代、よく独り自転車で遠出した。目的はない。強いて言えば暇で暇で、他にやることが思いつかなかったからだ。地図もなしでふらっと出て、知らない街まで行って帰ってくる。行く先は基本的に「気の向くまま」。風のある日は追い風を求めて「風の向くまま」――だけどこれをやると帰りに困ることになる。理由は既述の通り、向かい風だ。

当時最も遠くに行ったところを思い出して、距離を調べてみると、実家から片道36kmもあった。日が暮れた道を独り寂しくペダルを漕ぐ。元々目的があったわけでなし、なんでこんなことしてんだろうなぁ、とか、家で勉強してればよかったかなぁ、とか、思いながら。ここに向かい風が吹きつけてくると、正直泣きたくなってくる。ペダルが重くて重くて、一旦自転車を降りて、歩いて転がすんだけど、別にそれで楽になるわけでもなく、やっぱり歩くよりは乗ってた方が速いってことに気付いて、結局また乗って、重いペダルを漕いで……

 

思い返すと、微笑ましい無駄に満ちた青春の1ページかな、と思う。でも最近は大人になって、不要な苦労を避ける技術が身に付いた。強風の日は家にいた方がいいと思う。 

 

2017.11.19 T.N.

 

次回はテーマ【笑い】