ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

リロングウェのマーケット

 テーマ【リロングウェのマーケット】

 
  昨年8月に世界最貧国のひとつ、マラウイ共和国に行ってきた。そのときの日記(ともいえないメモのようなもの)が引き出しから発掘されたので、その思い出と、考えたことを書こうと思う。行きの飛行機で偶然出会った日本人*1に聞いた情報や、実際に自分が見聞きしたことを交えて書こう。
 国の産業は農業が主要なものだそうだが、これが完全な自給自足にはなっていない。種苗、肥料を外国から買っているためだ。人間にとって第一に必要な"食"が外国頼りとなってしまっている状況を変えようにも、自国で開発できる技術力はないし、そもそもの経済力が低いのでそのための投資も厳しい。恥ずかしながら、農業なら土地と身体だけでできると思っていたので、これには驚いた。発展途上国が経済的に先進国と対等になるのは非常に難しいと感じた。
 現地での見聞としては、首都のローカルなマーケットへ行ったが、凄まじいカルチャーショックを受けて、ほんの1時間弱の滞在でおそろしく疲れた。とんでもなく雑多としていて、とにかくハエが多い。売り物のチキン、果物、豆、魚などにハエがたかっているが、皆特に気にせず買っていく。全体的にごみごみとしていて、美しくはない。しかし、狭い上に、屋根の具合*2によっては暗いところさえあるにも関わらず、マーケットは活気があって、雰囲気は明るかった。皆自由にお喋りしながら商売をしていて、くつろいだ空気がある。世界一堅苦しい国と呼ばれる我が国とのあまりの差に、自分自身は緊張しきりだったが、暖かいものは感じることができた。南国の人は明るいとよく言うが、少し憧れるものがある。
 そのマーケットで布を一反買って、テーラー(仕立て屋)まで持っていった。職人さんは足踏みミシンで仕事をしている、こちらもなかなかローカルなお店だ。私のサイズに合わせて、シャツを仕立ててくれるのだが、これがおそろしく安い。マラウイクワチャ(現地通貨)でいうと結構な額ではあるが、日本円ではたしか、布代込みで 900円くらいだったろうと思う。アフリカ風の、といって伝わるかどうかわからないが、かなり派手な柄で、なかなか着るのが難しいが、なんといってもサイズがピッタリなのがいい。旅先で買って、旅先で仕立ててもらった、思い出の一着である。
 書物で調べられる情報でも、実際に見聞きしたものでも、客観的事実としては、非常に悪い経済状況ではある。だが不思議なことに、主観的には、深刻な、または悲観的な雰囲気は感じられなかった。おそらく、マーケットの人々にしろ、仕立て屋にしろ、現地の人の笑顔を多く見られたからだろうと思う。仕立ててもらったシャツを受け取る時、現地語で「Zikomo(ありがとう)」と言うと、職人さんが笑って「Zikomo」と返してくれたのをよく覚えている。
 
2019. 1. 20 T.N.

*1:彼はマラウイで1,2年前までボランティアをしていて、今は別の国で(ボランティアではなく生産社会で)働いているとのこと。そのため聞いた情報は、少し古いかもしれないが、現場に根ざした事実だと思う。ちなみに、彼が再度マラウイを訪れたのは、当時の友人を訪ねにきたとのこと。

*2:広いマーケットの中、屋根はあったりなかったりするのだ