ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

明かり

テーマ【明かり】

 

 昨年12月のノーベル平和賞授賞式、サーロー節子(旧姓:中村)さんの、自身の被爆体験を踏まえた演説中に、こんな台詞があった。「"Don't give up! Keep pushing! See the light? Crawl towards it." *1 8月6日、爆発による瓦礫の中で、この言葉を言ってくれた人がいたという。言葉通り諦めなかったことで九死に一生を得た彼女は、演説の最後にもう一度この言葉を繰り返し、諦めずに非核化を目指すことを世界に訴えた。

 世界平和を望んでいない訳ではないが、初めてこの演説を聴いたときには、あまり納得感がなかった。地雷禁止も、クラスター弾禁止も聞いたことはあるが、世界が着々と平和に向かっている実感はないからだ。今回も大して効果はないんじゃないか。平和の希望がハッキリと見えていないのだから、"See the light?"と訊かれたら、答えは"No"だ。

 と、思っていたのだが、ふと、違う捉え方もあるのでは、と考え直した。演説の"light"は希望や可能性を指しているのではなく、目的地であるとか、あるべき姿を指しているのではないか。具体的にはこの場合、「核兵器のない世界」である。核兵器禁止条約*2は、要は「核兵器はない方がいいよね」という、庶民にしてみれば「わざわざ言う意味あるか?」と思えるものだけど、「世界(国連)が民主的に決定した」ことに大きな意味があるのだろうと思う。世界中が目指すべき"light"の位置を確認したわけだから、後は進むだけだ。

 大切なのは目的を明確にすることだ。目指すところがハッキリすれば、そこに至る手段はいくらでも考えられるから。世界の非核化と個人的な経験を同列にするわけではないけれど、仕事上でも活かせる考え方だ。「これ、何のためにやってるんでしたっけ?」という、目的不明確なプロジェクトの数々に対してである。決して上司への愚痴ではない。自分自身、よくわからず動いていることがあるから、自戒を込めて。 事の大小を問わず、まず"light"を明確にすること。そうして、諦めずにそこへ突き進んでいくこと。

 

2018.05.13 T.N.

 

次回はテーマ【文学】

*1:「諦めるな。押し続けろ。明かりが見えるだろう?そこに向かってはって行け」

*2:核兵器禁止条約 - Wikipedia