ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

南阿蘇のペンション

テーマ【ポール・マッカートニー


ビートルズは高校の頃からよく聴いていた。しかし、私がポールのソロ曲をちゃんと聴いたのは20歳のときである。当時、1週間かけて九州をひとり旅行していて、そのうちの一泊を熊本の南阿蘇で過ごした。この時に私はある一曲のポールの歌と出会った。
阿蘇といえば「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」という日本一長い駅名を思い付く方もいるだろう。空気が新鮮で水が綺麗なこの地で、私は木々に囲まれた白い洋風のペンションに泊まった。11月のオフシーズンだったこともあってか、宿泊客は自分ひとりだけであったのを覚えている。その日の空は厚い雲で覆われて、時より冷んやりとした空気が流れていた。宿で休んでいたら、近くに天体望遠鏡があることをオーナーが教えてくれた。あいにくの曇り空であったことは百も承知だったが、特にすることがなかった私はそこへ向かった。案の定、星はひとつも見えなかった。月よりも明るく見える木星ですら観測できなかった。結局何もせずにペンションへ戻る。
オーナーも自宅へ帰ってしまい、広い館にひとり取り残される形で一夜を過ごすことになる。ツインベッドの部屋だったが、贅沢感よりも、もの寂しさの方が強く感じた。ベッドとベッドの間に机があり、その上にはCDコンポが置かれていた。ということは、CDもどこかにあるだろう。そしたら、机の引き出しの中に数枚のCDを見つけた。聴いてみると、オーナーがセレクトした70年代〜80年代の有名な洋楽が入っていた。色々と流していたのだが、その中で特に印象に残った歌が一曲ある。それがポールマッカートニーの「No More Lonely Nights」だった。当時の心模様と相まって、この出来事は今でも強烈に覚えている。記憶と感情というのは密接にリンクしているんだなあ。
人というのは、いつの時も何かしらの孤独を抱えている。その克服の仕方は様々であろう。ただ、今の私たちは孤独との付き合い方が下手なような気がする。最近はSNSなどで常に誰とでもつながっているので、そもそも孤独を感じる場面は減ってきているのかもしれない。一方で、お金や時間を浪費することによって、その場限りの埋め合わせをしている人も散見する。その場合、結果的に依存してしまうのがオチであろう。本質的に人の持つ孤独というのは、その人自身が向き合うべきものなのかなと。そんなことを感じる今日この頃である。

 

2018.03.11 T.Y.

 

次回はテーマ【卒業】