ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

ストーブ

テーマ【ストーブ】

 

芥川の「寒さ」がお気に入りだ。好きだったので、よく覚えているが、たしかストーブが出てきていた。今、青空文庫*1で読み返すと、たしかにある。もっとも、ストーブではなくて、「ストオヴ」だったけど。お話の内容自体はなんとも説明しにくいので諦めるけど、冒頭にこんな文がある。

『ストオヴの火は息をするように、とろとろと黄色に燃え上ったり、どす黒い灰燼に沈んだりした。それは室内に漂う寒さと戦いつづけている証拠だった。保吉はふと地球の外の宇宙的寒冷を想像しながら、赤あかと熱した石炭に何か同情に近いものを感じた。』

「同情に近いもの」というのは、「宇宙全体を温められるわけでもないのに頑張ってんなぁ」という気持ちだろうか。(別にストオヴ君だって、全宇宙を相手にする気はないと思うけどね。)芥川の真意はわからないけれど、全体を通して読んだ個人的な感想としては、否定的な意味での「同情」ではないと思う。むしろすごく優しい眼差しで、「共感」に近いのではないかな、と感じた。この頑張るストオヴへの共感的なものは、結構、僕の趣味に合っている。

わざわざ宇宙と比較しなくても、日常、無意味と思えることをやっていたりする。でもそれは寒さや、やるせなさや、その他色々と戦うにあたっての、自分にとっての唯一の手段だったりする。そういう小さくて無意味と思える何かが、「いつか報われる」というのではなくて、「それ自体に価値がある」と認めてくれるような「同情」だと思っている。

言いたいことがうまく言えないけど、似ている格言を持ってくるとしたら、『明日世界が滅ぶとしても、私は林檎の木を植える』かなぁ。それがもたらす結果以上に、それ自体に価値があるというような……

 

ま、ざくっとまとめると何気ない日々を大切にしましょう、ということです。最近は宇宙的寒冷が日本を襲っているので、お身体を冷やさぬように。

 

 

2018.01.29 T.N.

 

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