ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

テーマ【冬】

 

「冬はつとめて」と言うそうだ。古文は苦手だけれど、現代語訳と原文とを繰り返し見比べて、どうにか第一段だけ読みきった。清少納言先生の美的センスでは早朝がベスト。だけど自分としては正午あたり、真っ昼間を推したい。

 
 自分が冬生まれということもあってか、好きな季節ではあるのだけれど、冬のいいところを挙げろと言われると、美的な回答が難しい。例えば秋なら、空の高さだったり、夏の湿気がとんだ清かな風だったり、ちょっと気取って答えられるのだけど、冬はなかなか難しい。クリスマスがあって、冬休みがあって、自分の誕生日があって、お正月があって、という感じ。お題をもらってから、冬のいいところはどこだろうかと考えて、すぐに思いつかずに少し困った。考えながら出勤して、仕事をして、昼休みに食事をとりに外へ出たとき、「これかな」と思った。この季節のお昼は好きだな、と。
寒くなってくると酷暑以上に人通りがめっきり引く。その上、蝉が鳴かないことはもちろんのこと、生き物の気配がぐっと薄くなって、結果どうなるかというと、ごく静かだ。
聞こえるのは車のエンジン音くらい。色づいた葉もすっかり落ちて、立ち木も茶色一色だから、視覚的にもひっそりとしている。肩をすぼめて歩くと、一緒にいる人とのおしゃべりも陽気に弾けにくい。落ち着いた雰囲気が辺りに広がっていて、お日様が照っていても昼真っ盛りという感じがない。外を歩いているのに、雨の日の図書館の中のような気分に浸れる。冬は昼間も「をかし」と思う。
 

2017.12.17 T.N.

 

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