ふたりブログ

毎回とあるテーマでつづります

掃除

テーマ【掃除】

 

見慣れた熟語を改めて見直すと、「掃いて除ける」とある。机。床。本棚。ギター。みんな拭いて済ませてしまうし、そういえば職場の大掃除も雑巾を渡された。「掃く」なんて久しくしていない。

最後に「掃いた」のはいつだったか。きっと高校時代の掃除の時間が最後。何の感慨もなく過ぎ去ってしまったけれど、今思い返すと、「掃く」って、情緒のある行為だったなぁ。箒とそれを持つ人間、クローズアップしてみれば、埃は大きな力で吹き飛ばされているわけで、足元には小さな嵐があるともいえるけど、ロングショットで見ると、なんとも穏やかな雰囲気が漂っている。

ことにこれから季節が深まると、「掃く」のは埃に限らない。枯葉を集めるのも、掃除のひとつだ。「ドラマのワンシーンのよう」というお洒落な感じではないけれど、「昔話のよう」な懐かしい風情があるように思う。坊さんか、小僧か。はたまた女将さんか、悪ガキか。

山の麓の夕暮れに、箒で落ち葉を掃く音が響く。そんな情緒あるお掃除バイトないかなぁ、などと考えてみたけれど、部屋すらきれいにできない私に、秋の風情を代表するような大役は厳しそう。ドストエフスキー先生はこんな言葉を残しているそうだ。「お前の部屋を見せるがいい。そうすれば、お前の性格を言い当てて見せよう。」

 

美しい秋の暮れまでに、部屋も心も、いらないものを掃いて除けておこう。

 

2017.09.24 T.N.

 

次回はテーマ【明治】